-
ミスゼロへの挑戦!手術器材識別の『現在』と『未来』
2025年12月11日街路樹がイルミネーションで彩られ、心華やぐ12月がやってきました。 寒さが一段と厳しくなるこの季節、中央材料部(中材)の皆様におかれましては、オートクレーブや洗浄装置の蒸気配管からの放射熱が少しだけ、光熱費削減になっていると思いありがたく感じる瞬間もあるのではないでしょうか。
年末は手術件数が増える施設も多く、器材のセット組み作業も繁忙を極める時期かと思います。「あれ、このコセル、消化器だっけ?呼吸器だっけ?」忙しい時ほど、セット組作業・識別作業には神経を使いますよね。
今回のコラムでは、そんな皆様の負担を少しでも減らすための『手術器材の識別方式』について、基本から最新の産業技術の応用まで、深掘りしてお届けします。

セット組のミスをなくすための識別には、大きく分けて『物理的な視覚識別』と『デジタル技術』の2つのアプローチがあります。それぞれのメリットと、運用上の課題(ここが重要です!)を整理してみましょう。
物理的な識別のメリットは一目でわかる色ではないでしょうか。
色と言えば、識別用テープ(滅菌カラーテープ) 最もポピュラーな方法です。鉗子の柄などに、診療科やセットごとに決められた色のテープを巻き付けます。安価で導入しやすく、パッと見た瞬間に「これは整形外科用!」と直感的に判断できます。しかし、長期間の使用でテープが劣化・剥離し、その隙間に汚れや細菌が残留するリスクがあります。また、貼り替えの手間(シール剥がし)も現場の負担になります。
デジタル技術の識別は、管理が容易で手術器材の更新も管理できる部分なのかもしれません。
昔は、『中材』と刻印された手術器材をよく見かけましたが、現在の刻印はダイレクトマーキング(レーザーエッチング/刻印)で 器具表面にUDI(個体識別コード)を刻印しバーコードリーダーで読み込みを行うのが支流ではないでしょうか。半永久的に消えず、異物(テープ)を持ち込まないため衛生的ですが、視認性はないため、判別するシステム(パソコン)が必要です。また、レーザーの加工深度によっては、そこがサビ(コロージョン)の発生起点になることがあり、洗浄・防錆管理は必須になります。
そのUDI(個体識別コード)を刻印は、バーコード(GS1データマトリックスなど) 二次元コードを器材に直接印字するので、個体レベルでの使用履歴や所在管理が可能です。バーコード(GS1データマトリックスなど) 二次元コード以外のデジタル技術では、RFID(Radio Frequency Identification) 小型ICタグを用いた非接触読み取り技術だと思います。この方式は、一括読み取りが最大の強みです。コンテナに入った状態でも瞬時に全数確認ができるため、カウントミスを激減させます。血液が付着していても読み取り可能部分かもしれません。しかし、器材にタグを溶接する事から様々なトラブルも報告もあるのと金属製品に囲まれる環境では読み取り精度を確保するための調整が必要になる様です。

最強の布陣は『多重チェック体制』だと思います。どの方式にも一長一短があります。だからこそ、NCCがおすすめしたいのは『アナログとデジタルのハイブリッド』です。
例えば…
『物理的な識別』カラーテープ(または後述のカラーコーディング)で、直感的な仕分けをスピードアップさせ 『デジタル技術』RFIDやバーコードで、最終的な員数確認とトレーサビリティを担保。
このように複数の方式を組み合わせることで、ヒューマンエラーの隙間を埋める『多重チェック体制』を構築することが、安全管理の近道です。
では、NCCの産業事業部からの情報を交えて産業界の技術が医療を変えるかもしれないお話です。
産業系の『物理的な識別』では、テープを貼らない接着色技術(PVDコーティング等)が常識となっていて、現在では、PVD(物理蒸着)コーティングなどが、医療用鋼製小物にも採用されつつあります。 チタンやセラミック系の硬質膜で器具全体やハンドル部をコーティングすることで、金属そのものの色を変える」技術です。テープのように剥がれる心配がなく、洗浄性を阻害しません。さらに表面硬度が上がり、傷や摩耗に強くなるという副次的効果も期待できます。
『デジタル技術』では、AI画像認識(Computer Vision)が常識となりつつあります。皆さんもパン屋さんなどの会計時に経験されているかと思いますが、製品形状検知に使われる「画像認識AI」の応用です。 カメラの下にトレイを置くだけで、AIが器具の形状(シルエット)やサイズを瞬時に解析「コッヘルが1本足りません」「種類の違う鉗子が混ざっています」と画面で教えてくれるシステムです。タグも刻印も不要『置くだけ』で識別が終わるため、将来的にはこの方式が主流になるかもしれません。
洗浄のプロ集団からの手術器材識別に関する点で注意いただきたいポイントのお話
新しい識別方法を導入する際、決して忘れてはならないのが洗浄品質への影響です。カラーテープの糊残りにタンパク質が凝固していないか?レーザー刻印部分からサビが発生していないか?新しいコーティング器具に対応した洗剤を使っているか?このように手術器材識別の対策を行うと手術器材の洗浄も一緒に考える必要があります。私たちNCC・FIクリーン事業部は、ヨーロッパの先進的な洗浄装置・洗浄剤の販売だけではなく『洗浄評価』や『医療器材ダメージ管理』のプロフェッショナルでもあります。 「識別テープを使いつつ、衛生状態を保ちたい」「新しい識別システム導入後の医療器材ダメージ(錆び発生)が多いので、対策を取りたい」といったお悩みがあれば、ぜひご相談ください。識別方式に合わせた最適な洗浄プログラムや、残留タンパク質のチェックをご提案いたします。
NCC Column LIST

