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ヨーロッパに学ぶ、環境にやさしい医療機器再生洗浄剤の最前線
2025年05月01日5月の風物詩といえば、端午の節句に欠かせない『柏餅』や『粽(ちまき)』があります。
工場見学が好きな私、先日休日を利用し家族と京都の和菓子屋さんがイベントでやっている見学会に参加して来ました。『柏餅』や『粽(ちまき)』作業は、和菓子作りの中でも一二を争う位に手間がかかるそうです。素材を選び、包み、蒸して、寝かせるという一連の丁寧な作業が、商品のおいしさと安心を生むと同時に、柏の葉は『新芽が出るまで古い葉が落ちない』ため、家系の繁栄を願う縁起物とされ手間の中に作り手の『愛』と『思い』が込められています。
そんな『手をかける文化』は、医療の現場にも通じるものがあります。
たとえば、私たちが日々取り組んでいる医療機器の再生工程。ここでも“洗浄”という一見地味なプロセスに、最も繊細で確実なケアが求められています。今回は、ヨーロッパにおける洗浄剤の『環境へのやさしさ』という新しい視点を通じて、未来の医療と地球に向き合う取り組みをご紹介します。
EU規制と環境志向の高まり
・ヨーロッパでは、医療分野においても環境関連の法整備が先行しています。
REACH規則(化学物質の登録・評価・認可・制限)をはじめとする法規制により、
病院で使用される洗浄剤も環境・人体への影響を精査されたうえで運用される
ようになっています。
・医療機関の内部基準でも、『生分解性』『有害成分ゼロ』『低刺激性』
『低VOC(揮発性有機化合物)』といった環境評価指標が、再生工程
の洗浄剤選定に大きな影響を与えています。
ヨーロッパの再生施設で進む“グリーン洗浄剤”の活用
・ドイツ、オランダ、北欧諸国などでは、医療機器再生の現場で以下のような環境対応型洗浄剤
が主流になりつつあります:
・酵素系アルカリ洗浄剤(EN ISO 15883-1適合)
・低刺激性で生分解性が高く、環境中で自然に分解される成分
・高レベル汚染にも対応しつつ、器材へのダメージを最小限に抑制
・グリーンラベル認証取得洗浄剤
・EUエコラベル、Nordic Swanなどの第三者認証付き製品・製造
・原材料から排水までの環境影響を通算評価済み製造元であること
・製造ライン・製造成分・容器
・マイクロプラスチックや合成香料など非分解性物質の排除
・製造ラインのCO₂排出も抑制
・EUのCLP規則やREACH規制に適合した成分配合
これらの洗浄剤は、病院ごとのLCA(ライフサイクルアセスメント)に組み込まれ、病院全体のサステナビリティレポートに反映されることも一般的です。
洗浄パフォーマンスと環境負荷の両立
環境に優しいからといって、性能に妥協があるわけではありません。
むしろ、ヨーロッパでは性能評価と環境適合性がセットで語られるようになってきました。
・アルカリ酵素洗浄剤に含まれる多様な酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ)によって、
血液・脂質・多糖類を効率的に分解
・アルカリ域で低温洗浄により、熱に弱い精密機器に対応しながらヤコブ病エビデンスにも対応
・残留評価(清浄度テスト)もISO 15883に準拠しており、信頼性が高い
日本でも導入可能かも!?
ヨーロッパのような制度は日本にはまだ完全には整っていませんが、
次のような取り組みは今からでも可能です。
・洗浄剤を選定する時の基準見直し
・有害化学物質を含まない製品を選定
・排水モニタリング体制の整備し排水基準に合致した製品を選定
・清浄度・非腐食性も確認
・EN ISO 15883-1に基づいた清浄度試験・残留タンパク質試験・材質適合性試験などに合格済確認
・アフターフォローによる清浄度維持の確認
NCCでも環境配慮型洗浄の実践へ
当社NCCでも、ヨーロッパ基準に近づけた製品の導入・開発を進めております。
・酵素系アルカリ洗浄剤(生分解性99%以上、リン酸塩フリー、EDTAなどの難分解性
キレート剤不使用)
・全ての取り扱い製品において天然由来の界面活性剤の使用
・全ての取り扱い製品のマイクロプラスチックや合成香料など非分解性物質の排除
・残留タンパク質の視覚検査ツールや定量測定キットによる定期的な清浄度チェック体制
洗浄の進化は、未来への責任
今後、環境規制は確実に医療の現場にも影響を及ぼしていきます。
ヨーロッパに学ぶ『サステナブルな洗浄』の思想は、患者の安全だけでなく、地球の未来を守る選択でもあります。
医療機器の再生を担う現場にこそ、“洗う”ことの意味を、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。
また、再生プロセス全体の見直しを含めた洗浄工程の最適化コンサルティングも実施可能です。
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