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2025年05月01日
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2025年01月08日
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洗浄評価の悩み、解決のヒントを見つけませんか?

2025年09月10日

9月になり朝晩は少し肌寒く感じられるようになりましたね。夏が終わりようやく落ち着いて業務に集中できる時期が来た方も多いのではないでしょうか。

中央材料部では日々多くの手術器具を処理し、安全を確保するために尽力されています。
特に洗浄プロセスの有効性を証明する『洗浄評価』は、患者さんの安全を直接守る重要なタスクです。しかし『滅菌保証のガイドライン2021』への変更に伴い、チャレンジデバイスのレシピが変わったことで、洗浄不良かも、と思い悩まれているというお声をよく耳にします。

本コラムではこの変更が何を意味するのか、そしてどのように対応すればよいのか、実践的な視点から解説します。

旧ガイドラインから新ガイドラインに代わるにあたり、チャレンジデバイスを構成するレシピの「概念」が大きく変わった理由は?

『滅菌保証のガイドライン2021』では、これまでの『洗浄評価・判定ガイドライン2012』から、洗浄評価の考え方を根本的に見直されました。
旧ガイドラインのレシピは、どちらかというと『洗浄機の能力をどこまで試せるか』に焦点を当てた、いわば『負荷試験』の思想が強かったと言えます。一方、新ガイドラインは洗浄プロセスが常に『一定の清浄度』を達成できることを証明する『品質マネジメントシステム(QMS)』の思想に基づいています。この変更の背景には、洗浄バリデーションの焦点が「どれだけ多くの汚れを落とせるか」、から「どれだけきれいにできるか」という最終的な品質へとシフトしたことがあります。このシフトは洗浄プロセスの“再現性”と“客観性”を高め、より確実な患者の安全を追求する国際的な動向にも合致しています。

新ガイドラインでは、テストデバイスには以下の3つの要素を組み合わせた、より包括的なプロトコルを求めています。

1. 適切な模擬汚染物(テストソイル)の作成
臨床現場の汚染は患者さんによって異なります。そこで、洗浄評価には、再現性を確保するために標準化された模擬汚染物である『テストソイル』を使用します。新ガイドラインのレシピでは、主要成分に羊血液とプロタミンを用います。これは、疑似血液(卵、小麦など)に比べ、より厳しい条件下での評価を可能にするワーストケースを想定した指標物質となっています。

2. テストデバイスの構造ワーストケースを想定
新ガイドラインでは、洗浄が困難な構造を持つ器材をワーストケースとして選定し、洗浄の有効性を実証します。例えば、ボックスロックやヒンジ部分を持つ器材など、洗浄液やブラシなどの物理的な器具が届きにくい部分を持つものが選ばれます。このワーストケースで清浄度をクリアできれば、より洗浄が容易な他の器材も清浄化されるという合理的な証明になります。

3. 再現性のある汚染プロトコル
汚染物の塗布方法も厳密に標準化し、再現性を確保する必要があります。新ガイドラインでは、プロタミン溶液を添加した羊の血液を、洗浄が最も難しい部分に集中的に塗布します。これは旧ガイドラインよりも多い添付量に設定されており、汚染物を塗布した後に乾燥(コンディショニング)させるステップも追加事項が加わりました。これは、手術後に洗浄が遅れて汚染物が固着した場合を再現し、洗浄プロセスの堅牢性を厳格に評価するためです。

これらの変更により、残留タンパク質の抽出量が旧ガイドラインよりも増加する傾向にあります。これは、より厳しい条件で洗浄評価を行っていることの証であり、洗浄プロセスの安全性をより高く証明できるようになったと言えます。

ヨーロッパの動向から見る残留タンパク質測定方法

NCC・FIクリーン事業部が取り扱う製品はヨーロッパからの輸入商品が多数を占めます。
欧州では洗浄評価におけるチャレンジデバイスの利用はすでに広く普及しており、EN ISO 15883-5(医療機器洗浄消毒器の性能試験)などで詳細なテストソイルのレシピや試験方法が規定されています。これらの基準は今回の日本のガイドライン改訂にも影響を与えています。ヨーロッパの医療現場では洗浄後の器材の清浄度保証を客観的な数値で評価することが当たり前になっており、インシチュー検査を用いた定量分析法が広く用いられています。
日本ではまだ残留タンパク質のインシチュー検査は普及しておらず、以下2項目の残留タンパク質抽出法がガイドラインでは説明されています。
1. BCA法(Bicinchoninic Acid Assay)は、信頼性と再現性が高く、界面活性剤の存在下でも安定した測定が可能です。
2. OPA法(o-Phthalaldehyde Assay)は、非常に迅速で高感度ですが、特定の洗剤成分が測定に影響を与える場合があります。
こうした定量分析によって得られた数値が、許容値(鋼製小物の場合200µg/器械以下)を下回っていることを証明できれば、洗浄プロセスはバリデートされたと見なされます。この定量分析で器材に残留した目に見えない残留タンパク質を発見することが、患者安全を確保するための重要なステップです。

NCC・FIクリーン事業部からのご提案

洗浄評価の変更は現場の皆様にとって大きな負担になっていることと思います。特に、残留タンパク質測定値が思ったような数字にならず(大きい数字で検出)で、対策や改善方法についてお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
NCC・FIクリーン事業部では、そうした皆様の課題を解決するため、ソフト(洗浄評価製品)・仕組み(多くのメーカー対応プログラミング方法)・教育(セット方法や前処理方法)の3つの柱で皆様をサポートしています。この当社の洗浄評価システム(3つの柱)は、ヨーロッパで培われたノウハウに基づき、ガイドラインに準拠したインシチュー検査キットをベースとしてご提供しています。自施設での実施が難しい場合は、弊社への委託も可能です。

患者さんへの安全性を確保するため、客観的で科学的なデータに基づいた洗浄評価は不可欠です。私たちは、皆様の医療器材の清浄度を担保するための最適なソリューションをヨーロッパの最新情報も踏まえながらご提案させていただきます。
洗浄評価でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。
変化の多い医療現場において、皆様が安全な医療を提供できるよう、私たちも常に最新の情報を提供し続けていきたいと考えています。

今後とも、NCC・FIクリーン事業部のコラムをどうぞよろしくお願いいたします。

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