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2025年01月08日
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医療機器洗浄アドバイザーコラム 第44弾

医療機器洗浄アドバイザーコラム 第41弾

2024年08月22日

中四国エリア担当の川端です。
私も年齢が50代に入り健康のことが気になり始めました。
健康には「腸」が大事、という話を最近よく聞きます。
『腸活』という言葉もよく耳に入り、気になったので動画サイトなどを色々と見てみました。
腸内細菌の善玉菌が体にとって良い働きをしてくれるのですが、
善玉菌にもいろいろ種類があり個人差もあるようで
自分に合う菌合わない菌、増やした方が良い菌そうでない菌など、
腸内細菌のバランスをコントロールするのが大事なようです。
今後は採便したものを1時間程度で腸内細菌の状態などを調べ、
その日にどんな食事を取れば良いのか、どんな食材を買えば良いのかを
スマホのアプリなどで知らせてもらえるようなシステムも開発が
進んでいるようです。
体内の状態は自分では感覚的にしか分かりませんが、このような新しい
技術で客観的なデータを常日頃から出せるのは自分の体をより良い状態に
アップデートするためにとても役立つかもしれません。

中材の洗浄部門にも客観的なデータがより重要になってきています。
海外では中材業務のQMS化(Quality Management System=品質管理システム)が
強く言われ客観的なデータが必要となっている様です。
そこで、今回は海外のガイドライン(指針)での洗浄評価に関する記述を紹介します。

日本で知られているのは『ISO-15883』と『HTM』ではないでしょうか。HTMと
ISO 15883はどちらも医療器具の洗浄と除染に関する国際的な
指針ですが、いくつかの異なる焦点やアプローチがあります。
それぞれの基準の特徴を比較してみます。

★ISO 15883(国際標準化機構)

◎一般的な洗浄プロセスの基準:
医療器具の洗浄・消毒装置(WD)の設計、性能、および試験方法に関する標準を提供します。洗浄と消毒のプロセス全体にわたる国際的な基準であり、広範な医療器具の再処理に
対応しています。

◎リスクベースのアプローチ分析:
洗浄プロセスの効果を評価するためにリスクベースのアプローチが採用されています。
これには、医療器具の使用目的や特性に応じた洗浄基準の設定が含まれます。
この洗浄基準を達成したかを検証するための試験と検証のプロセスが詳細に
定められています。
具体的には、器材に対する洗浄効果の評価基準や検証手順が含まれます。

★HTM(イギリスのNHSガイドライン)

◎悪性プリオン病(vCJD)感染防止に重点が置かれているプロセス基準:
過去の狂牛病(BSE)やクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)といったプリオン病の
影響を受けたイギリスならではの観点基準を持っている。
特に洗浄後の残留タンパク質量に焦点が当たっている部分があります。

◎継続的な監視とトレンド分析:
洗浄後の残留タンパク質の継続的な監視が求められ、トレンド分析を通じて品質保証を
図るシステムを構築することが奨励されています。

日本の『滅菌保証のガイドライン2021』ではあまり触れられていないのが、
年間200症例が認められており、発症すると1年以内に死に至るという、
悪性プリオン病(vCJD)についてです。
ですので今回はプリオンについての記述が多いHTMに関して深堀り説明を
してみたいと思います。

HTMでも『HTM-01-01』が医療器具の管理と除染について記されています。
以下にまとめてみます。

① 洗浄後器材の残留タンパク質の基準値としては
『器材の片側あたり5μg以下』となっています。

② 5㎍以下の根拠については「効果的な洗浄プロセスを行うことで達成可能な
数字であること」がしめされています。

③ ただこれがプリオン感染リスクがなくなるという決定的なエビデンスではありません。ですがプリオンタンパク質汚染の量の指標と捉えます。

④ 測定を器材の片側あたりとする理由。
プリオンタンパク質による感染の伝播は、患者の組織と接触する器具の総面積に
関係します。したがって、機器の片側あたりのタンパク質量の評価は、機器の単位面積
に基づく評価よりも優れているであろうと考えます。

⑤ プリオンは器具の表面が乾燥した状態だと除去することが非常に難しくなります。
プリオンを効率的に除去するには、処置の終了後すぐに器具を中央材料室に運び、
可能な限り速やかに洗浄と再処理が行われるようにする必要があります。器材を
湿潤状態に維持することが重要です。

⑥ 洗浄後の器具に残留するタンパク質を継続的に監視することが重要です。
5µgの基準を単なる合格または不合格としてではなく、むしろこの値に近づき、
この値以下を目指す方法としてWDの洗浄効果だけでなく、それ以前の器具の過程も
監視することを目的とした傾向分析および品質保証システムの一部として考える
必要があります。
四半期ごとの残留タンパク質検査の結果を使用して傾向を分析し、その分析に
基づいて行動する必要があります。

少し小難しいことを書き並べてしまいましたが、HTM-01-01には洗浄評価
について以上のようなことを読み解くことができます。

今回HTMを読んでみて気付いた点は2つあります。
一つはHTMというかイギリスはプリオンの感染防止という観点を強く持っているな
ということ。5㎍という基準も、器材の片側で測定することも、洗浄前の器材を
乾燥させないことも、プリオン感染防止という考え方からきて
いるようでした。
もう一つはタンパク質拭き取りの頻度に対しての考え方です。
⑥に示したように5㎍を目安として器材再生処理のクオリティをより良くしていこう
という考えのもとに行うことが大事であると言っています。
これが年に一度だけの検査になるとたまたまの要素が出てきますし
傾向を分析することも難しいと思います。

体の健康と同様にプリオン対策や洗浄のクオリティについても
客観的なデータを日常的に取り、アップデートしていくことが
今後のより良い未来につながっていくのだと感じました。

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