-
【中材必見】「SSIは中材のせい」と言わせない!洗浄業務の「なぜ?」を自信に変える記録管理術
2025年08月09日今年の夏も、じめじめとした日が続いていますね。こんな時期は、普段以上に感染対策に気が引き締まる方も多いのではないでしょうか。特に手術室や中央材料室(CSSD)で働く皆さんにとっては、患者さんの安全を守るため、日々の業務に並々ならぬ熱意を注いでおられることと存じます。しかし、もし手術部位感染(SSI)が発生した際に、「中材の洗浄が原因では?」と心ない言葉を投げかけられ、反論できずに悩んだ経験はありませんか?日々、膨大な量の医療器材と向き合い、洗浄・滅菌に心を砕いている皆さんだからこそ、その悔しさはひとしおでしょう。
ご安心ください。本コラムでは、そんな皆さんの悩みに寄り添い、中央材料室がいかにSSI予防の要であり、その洗浄業務が厳格な「保証」の上に成り立っているかを、具体的な記録管理のポイントと共にお伝えします。この情報が、皆さんの日々の業務の自信となり、より質の高い医療提供の一助となることを願っています。
なぜ洗浄業務の「保証」がSSI予防の鍵となるのか?
手術部位感染(SSI)は、手術を受けた患者さんにとって非常に重篤な合併症であり、医療機関にとっても在院日数の延長、医療費の増大、さらには病院の信頼失墜といった甚大な影響を及ぼします。その予防には、手術中の手技はもちろんのこと、使用される医療器材の適切な再生処理が不可欠です。中央材料室(CSSD)は、医療器材の洗浄、消毒、滅菌、保管、供給という一連の再生処理を一元的に担う、まさに感染制御の「心臓部」と言えます。このCSSDの業務が適切に行われることで、「感染源を元から断つ」ことが可能となり、SSIの発生を大きく抑制できるのです。「洗浄」は、その中でも最も基礎的かつ不可欠なステップです。なぜなら、洗浄が不十分であれば、その後の消毒や滅菌の効果が著しく低下し、結果として感染リスクを高めてしまうからです。つまり、最終的な滅菌工程だけではなく、「洗浄」の質にこそ最大限の注意を払い、保証していくことがSSI予防の鍵となります。
「見える化」が自信を生む、他業種に学ぶ作業手順書作成のヒント
皆さんの部署では、日々の洗浄業務において、細かく手順が定められた標準作業手順書(SOP)が活用されていることと思います。実は、このSOPの作成と徹底は、製造業など他の多くの産業分野でも品質管理の根幹をなすものです。例えば、精密機器の組み立て工場では、一つ一つの部品の扱い方、締め付けるトルク、検査のタイミングまでがSOPに詳細に記され、それに従うことで製品の品質が保証されます。また、食品工場では、衛生管理や温度管理、原材料の投入量などがSOPによって厳格に管理され、食の安全が守られています。
これらの業種に共通するのは、「誰が、いつ、どこで、何を、どのように」行ったかを明確にし、その結果を記録することで、プロセスの再現性と品質を保証しているという点です。皆さんの洗浄業務においても、この「見える化」と「記録」の徹底こそが、SSIに関する疑念を払拭し、業務の正当性を証明する力となるのです。
ヨーロッパに学ぶ!用手洗浄における品質保証の視点
NCC・FIクリーン事業部が日本市場に展開する多くの製品は、ヨーロッパからの輸入商品です。ヨーロッパ諸国では、医療機器の再生処理に関する規制やガイドラインが非常に厳格であり、その中でも用手洗浄に対する品質保証の考え方は注目に値します。
例えば、用手洗浄の作業手順書においても、以下の点が非常に細かく規定されているケースが多く見られます。
・ 使用する洗浄剤の種類と濃度・温度
洗浄剤メーカーの推奨に加え、水質に応じた調整方法まで明記されます。
・ 浸漬時間と洗浄方法
器材の種類や汚染度に応じた浸漬時間、ブラシの選定、洗浄時の水の流れの方向、ブラシの当て方、
内部腔のブラッシング方法などが詳細に図示されることもあります。
・ すすぎの回数と水量、水質
洗剤残存を防ぐためのすすぎの徹底が重視され、すすぎ水質(脱イオン水など)の規定も明確です。
・ 個人防護具(PPE)の着用ルール
作業者の安全を確保するためのPPEの種類、着用手順、交換頻度などが詳細に定められています。
・ 作業環境の維持管理
洗浄場所の換気、清掃手順、使用する設備の日常点検などが含まれます。
これらの詳細は、単に「きれいにする」だけでなく、「清浄度を保証する」という視点から
設計されています。特に、用手洗浄は自動洗浄装置と異なり、作業者の熟練度や手技に依存する
部分が大きいため、作業者の教育・訓練記録と、洗浄後の徹底した目視検査、そしてその結果の
記録が、品質保証の重要な要素と位置づけられています。
患者様の安全性を確保する「清浄度」のためのSOPの役割
「医療現場における滅菌保証のガイドライン2021」においても、医療器材の再生処理における各プロセスの記録の重要性が強調されています。特に中央材料室のSOPは、単なる作業指示書ではなく、患者様の安全性を確保するための「清浄度」を保証するための極めて重要な文書です。このガイドラインに準拠し、以下の点をSOPに明記し、その実施記録を残すことで、皆さんの洗浄業務の「保証」をより強固なものにできます。
・ 洗浄・消毒プロセス記録
水質管理記録: 洗浄・すすぎ用水(水道水、軟水、脱イオン水)の導電率などの定期的な確認
結果を記録します。基準不適合時の是正措置も記録に残します。
・ 洗浄剤・消毒剤管理記録
使用する洗浄剤・消毒剤の有効期限、濃度測定結果、使用温度、作用時間などを記録します。
・ 洗浄評価結果記録
残留タンパク質測定や洗浄インジケータの結果を数値や写真で記録し、合否を判定します。
・ 用手洗浄の記録
使用設備の日常点検、洗浄後の目視検査結果(異物残存の有無)、製品適格性確認結果を
記録します。
・ 滅菌プロセス記録
滅菌方法とサイクルパラメータ: 温度、圧力、時間などの物理的パラメータを記録し、
設定範囲内であることを確認します。
・ BI/CI結果
生物学的インジケータ(BI)の培養結果、化学的インジケータ(CI)の色変化を記録
します。
・ 積載状況
滅菌物の積載構成がSOPの範囲内であったことを記録します(写真記録も推奨)
・ 滅菌物の外観確認
滅菌後の包装材の破損や器材の異常の有無を目視で確認し、記録します。
・ 滅菌器の日常点検
ボウィー・ディックテストの実施と合格結果を記録します。
・ 医療器材の保守・点検記録
洗浄装置、滅菌装置の定期的な保守管理記録を維持します。
計測器の校正記録を維持し、精度を保証します。
個々の医療器材の機能検査やメンテナンス履歴も記録します。
・ 教育・訓練記録
医療器材の再生処理を担当する全作業者の教育・訓練記録を維持し、専門知識と
技術を有していることを証明します。
・ 異常発生時の対応記録
滅菌不良や異常が検知された場合、原因究明、是正措置、再発防止策に関する詳細な記録
を保持します。
これらの記録は、単に義務として行うのではなく、万が一SSIが発生し、原因究明が必要になった際に、「中央材料室の洗浄業務はガイドラインに則り、適正に行われていた」という揺るぎない客観的証拠となります。そして、この記録こそが、皆さんの業務の「保証」であり、自信の源となるのです。
日本市場における用手洗浄における作業標準手順書作成の未来
現在、「医療現場における滅菌保証のガイドライン2021」では、トレーサビリティの重要性が述べられているものの、具体的な記録連携の方法までは明示されていません。これは、各医療機関がそれぞれの運用実態に合わせて、器材の個別識別、滅菌サイクル情報、供給先情報を紐付けたシステムを構築する必要があることを示唆しています。しかし、この「記録を残す」という行為は、未来に向けて大きな可能性を秘めています。手書きでの記録から、QRコードやRFIDタグを活用したデジタル記録への移行は、トレーサビリティをより強固にし、SSI発生時の迅速な原因究明と感染拡大防止に大きく貢献します。データが蓄積されることで、洗浄・滅菌プロセスの改善点が見つかりやすくなり、ひいては医療の質の向上、患者さんの安全確保に繋がるでしょう。
私たちは、皆さんの日々の業務をさらに効率的かつ確実なものにするため、最新の洗浄装置や洗浄剤、
そして洗浄評価システムを提供しています。ヨーロッパの先進的な技術とノウハウを日本市場に展開することで、日本の医療現場の洗浄・滅菌レベルをさらに高めるお手伝いをしたいと考えています。
NCC・FIクリーン事業部からの提案
私たちは、中央材料室の皆様が、日々の洗浄業務に自信を持ち、SSI予防の最前線で活躍できるよう、以下の3つの柱でサポートいたします。
① 高性能な超音波洗浄装置
最新の真空超音波洗浄装置と卓上超音波洗浄装置は、洗浄プロセスの再現性を高め、
ヒューマンエラーのリスクを低減します。適切な洗浄方法や定期的なメンテナンスについても、
きめ細やかなサポートを提供します。
② 高品質な洗浄剤
器材の材質を傷めず、有機物や微生物を効果的に除去する最適な洗浄剤をご提案します。
水質に応じた洗浄剤の選定もサポートいたします。
③ 確実な洗浄評価
洗浄効果を客観的に評価するための洗浄インジケータや残留タンパク質測定キットを提供し、
皆さんの洗浄業務の品質を『見える化』します。
これらの製品とソリューションを通じて、皆さんの洗浄業務の「保証」をさらに強固にし、
SSI予防に貢献できると信じています。
おわりに
「SSIは中材のせい」という言葉に、もう悩む必要はありません。中央材料室の皆さんの日々の努力と、適切な標準作業手順書に基づいた業務、そして何よりも「記録」という客観的な証拠が、皆さんの業務の正当性を証明します。私たちNCC・FIクリーン事業部は、これからも中央材料室の皆様に役立つ情報を提供し、日本の医療現場の感染対策に貢献してまいります。今後とも、NCC・FIクリーン事業部のコラムにご期待ください。そして、何かお困りごとがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
NCC Column LIST