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医療機器洗浄アドバイザーコラム 第43弾2024年10月31日近畿・東海・北陸エリア担当の竹中です。 
 
 最近、私が気になったニュースの一つがiPhone16の発売です。
 Phone16では、AI機能が搭載され、また一歩AIが私たちの身近な存在になりました。
 私が初めて手にしたiPhoneは3GSでしたが16年間を振り返ってみると、
 デザインや操作性は基本的に変わっていませんが、便利な機能が沢山増えている事に気がつきます。
 
 そこで中央材料部で使用される洗浄装置も同様の進化が見られることに気づきました。
 特に洗浄装置の進化はiPhoneの「逐次処理」から「並列処理」への変化と似ており、
 その進化の過程を考えて非常に進んでいる部分と未来予想についてお話しします。
  昔からあるトンネル型の洗浄装置は5m程ある長い洗浄装置で、 
 予洗→洗浄→すすぎ→潤滑→乾燥とトンネルの中を器材が移動しながら工程が進み、
 一度装置に器材を入れると後は自動で機械が洗浄してくれる便利な装置ですが、
 実は昔のパソコンでも計算を行うCPU(中央演算処理装置)も同じ考え方で、
 処理速度を上げていました。
 計算するユニットを何段も縦一列に並べて動作速度を上げていましたが、
 この様な処理の仕方を「逐次処理」と言いますが欠点もありました。
 
 縦一列に並べるには大きさに限界があり、大きくなればなるほど電気も沢山消費します。
 また、列の途中で計算ミスが起こるとトンネルの最初に戻って再計算する必要があり、
 ロスが大きく十分な性能が出せない事もありました。
 これはトンネル型の洗浄装置も同じで、大きな設置スペースが必要で
 洗浄の途中で問題が起きると全ての工程が止まってしまい中材業務に支障が出ます。
 
 今のiPhone16の計算方法はどうなっているかと言うと、「並列処理」になっています。
 処理能力が高い「高性能コア」と省電力タイプの「高効率コア」、
 特殊な画像処理に特化した「GPUコア」が並列に動いています。
 今の中材に例えると大量の器材を洗浄できる大型のWDが「高性能コア」で、
 スリッパなどを洗浄する小型のWDが「高効率コア」となります。
 また、ラパロ鉗子などの内腔器材の洗浄に特化した真空超音波洗浄装置などが「GPUコア」になります。
 
 もし『逐次処理』のトンネル型5槽式洗浄機が故障したら洗浄が止まってしまいますが、
 『並列処理』の単槽式洗浄機が5台あれば1台が故障しても残り4台でカバーできるので、
 業務を続けられるメリットがあります。
 但し、大量の器材を洗浄する大学病院などでは今でも『逐次処理』のトンネル型が
 活躍しています。
  私たちの業務に身近な全自動洗浄装置(ウォッシャーディスインフェクター)も日々進化していますが、1990年代より熱消毒機能が加わり、中材業務に1つの「革命」が起きました。 
 それまで手術部・病棟・外来と個別に行っていた使用済み医療器材の一次洗浄・消毒を廃止(中止)し、洗浄・消毒の中央化への推進が行われました。
 これにより病棟・外来での汚染の拡散防止や職業汚染の防止と熟練した専従職員による
 洗浄によって、医療器材の清浄度の品質管理が行える様に進化しました。
 
 各部署で一次洗浄・消毒をすることによるデメリットは、
 標準予防策(スタンダード・プリコーション)の実施が難しい事や
 洗浄業務未熟者による不完全な洗浄、消毒剤・消毒工程を間違える危険性があります。
 それでは「中央化」によるメリットですが、標準予防策(スタンダード・プリコーションの
 確実な実施や医療器材の品質管理(QMS)が行える所が上げられます。
 第21弾のコラムでは、『一次洗浄廃止の中央化が進んで数十年、現在の悩み』をテーマに
 更に詳しく説明しているので興味のある方はご覧ください。
 
 私たちが普段使っているスマホのような製品は、常に未来を見据えて進化を続け
 AI機能など10年先を見据えた進化がユーザーから求められています。
 中央材料部でもATS自動搬送処理を導入した最新単槽式ウォッシャーディスインフェクー
 は、中材業務における衛生管理の最前線を担い、業務効率を大幅に改善しています。
 中央材料部の未来を考えると今後も新しい技術やプロセスが重要になり、
 柔軟で効率的なシステムが求められ、私たちも常に進化していく必要があります。
 NCCもQMSにおける業務改善プロセスの見直しを皆様と情報共有する取り組みとして
 勉強会を実施していますので、ご興味のある方は是非ご連絡下さい。
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